murakami Labo.

村上研究所

読むこと、知ること

数週間前に、米原万里著『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋)という本を読み終えた。
これが久しぶりに「ガツン!」と来る本でした。
 
第1部は「私の読書日記」と題された日記風のエッセイ、第2部が書評という流れになっているのだが、第1部の最初から自分のよく知らない分野の本がすごく生き生きした形で紹介されているのだ。読んだ本を紹介する、という基本軸は変わらないまま、日常生活のことやニュースに対する意見なども触れられていて、著者の膨大な知識とか、ブレのない思考力、正義感が伝わってきて楽しい。
書評といっても単に読んだ本の良し悪しが綴られているわけではなく、評者のもののみかたと本との間でぶつかり合って、新しい価値を生み出すものなんである。

しかし驚いたのはその文章の完成度もすごいけど、自分がよく知らない分野の内容の本が、すげー楽しそうに生き生きと紹介されていることだ。自分は政治のことはよくわからない。経済のこと、日本の外交のこと。イラクで起きた戦争のことは興味はあったけど背景の民族やなんかのことはよく知らない。靖国神社の参拝で大騒ぎになるけど、その理由は何となくのレベルでは説明できるけれど、じゃああなたの意見は?と聞かれたら「うーん」となってしまう。
それは良くないな、とこの本を読んで思ったのだ。

たとえば歴史とか。おれは高校のときは数学、物理は超得意だったので学年でトップクラスだったけど、「社会」だけは苦手で、世界史のテストで100点満点中8点だったことがある。歴史の授業で覚えているのは中国の「宦官」の話だけです。

この本の著者はロシアに留学してたことがあって、向こうの教科書はけっこう面白いらしい。そして「日本の歴史の教科書は事実の羅列だけでつまらない」というようなことが書かれていた。歴史の授業がつまらなく感じていたのは間違っていないのだ! でも何とかほかの手段で歴史のことを知りたい、と思ってしまった。

うまく説明できないけど、そういう歴史や社会のことを知らないで過ごすより、知っているほうが、ものの見方が変わってきて、同じものを見てもより深い部分を感じることが出来そうだからだ。ブッシュは世界地図でイラクがどこにあるのかわからないらしい、とかいう笑えるような恐ろしい話も紹介されてたな・・

かといって真面目な分野もあるかと思えば、エンタテイメント分野の本もけっこう読まれている。本屋では見かけたことはあるけど読んだことのない作家はたくさんいる。ペットが好きらしくて、犬や猫の本もたくさん紹介されている。著者は速いときは1日に7冊(!)も読むらしい。すげえ!
著者はロシア語の同時通訳もされていた方で、ゴルバチョフさんやエリツィンさんから直接指名されていたという。

この本で紹介されている本や著者ので、面白そうなやつをしばらく今後漁っていくことになるのではないか。読んだことのない本はまだまだあって、知らない世界はまだまだあるよ。
 

打ちのめされるようなすごい本

打ちのめされるようなすごい本