murakami Labo.

村上研究所

『わたしたちの体は寄生虫を欲している』

わたしたちの体は寄生虫を欲している (ポピュラーサイエンス)

わたしたちの体は寄生虫を欲している (ポピュラーサイエンス)

honzhttp://honz.jp)という世にも恐ろしい書評サイトがあり、面白すぎてもう最近は意識的に見ないようにしているのだが、うっかり覗いたらもう最後。読みたい本だらけでどうしましょう。最近のわたしの読む本の半分くらいはこのサイトに載っていた本だろう。この本もhonzでけっこう前に紹介されていた本だ。2013年8月第1刷発行。
 
瀬名秀明の序文にもhonzの書評(http://honz.jp/29929)(ううリンクを張っちまった、おれなんかの文章よりこっちのほうが面白いよ!)にもあるように本書の前半の話題はだいたいタイトルからも想像できる。人類は長い歴史のなかでお腹のなかの寄生虫と共存していた。歴史的にみれば寄生虫と共存していた時代のほうが長くて、その虫はキモチわるいとはいえ身体に害だけではなく益をももたらしていた。寄生虫がいなくなったことにより、ヤツがいたときには無かった病気になるようにもなった。旧き良き時代のように、お腹に再度寄生虫を入れてみるのはどうか。
 
というような話題が(私には新鮮だったのだけれど)わりとよくある話らしく。実際にブタの寄生虫の卵を呑みこんで育てる実験なんかが紹介されている。それである種の病気が治ったという。しかしこの本がほんとうに面白いのは後半のほう。自然と人類の関係性を考えるうえで新しくて重要な仮説が続々と紹介されているのだ。

  • 人と牛乳について。もともと人には牛乳を消化する酵素をもった遺伝子はなかった。牛が多く繁殖し、人は最初は食糧に困って仕方なく牛の乳を飲んでみた。たまたま突然変異で牛乳を消化できる遺伝子になったものが自然淘汰で生き残った。
  • 生物のなかでいちばん進化しているのは人間、という考え方がメジャーかもしれないが、他の生物との相互作用によって生きている。
  • 人はつい最近まで他の生物(トラとか大型動物)に食べられていた。長い間、他の生物に食べられまいという恐怖の感情があるほうが自然な状態だった。現在、食われる心配がなくなった代わりに、精神障害やストレスなど別の症状が生まれた。
  • どんな外敵がいるかという環境の影響を受けて、人は眼が発達し、その代わり嗅覚や聴覚は鈍くなった。
  • ついこないだまで人の体は毛むくじゃらだったけど、今はツルツルなのは、体毛のなかにシラミなど病気を媒介する生物を防ぐためだったのではないか。
  • しかしツルツルになったことによって皮膚の色が黒くなり(黒人)、体内でビタミンDを生成することができなくなって、くる病になる人が増えた。その後に白人が生まれる。
  • 外国人を怖いと思うのは、よそからの病気を防ぐためではないか。
  • 現代の都市のなかに理想の自然を取り戻すには。限られた土地で増えた人口を養うために考えられた垂直農園とは(「垂直農園」というワードで画像検索すると近未来の絵が!)

というようなエピソードが山盛りで、読み応え満点である。
 

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

これはしばらく前に読んだ本だけど、これを思い出した。奥さんが農薬の影響で倒れてしまったため、無農薬でリンゴを作りたいと考えだした木村さん。農薬がないと当然リンゴの木の周りに害虫が飛んだり、周りの農家から文句を言われるようになったりと苦戦の連続だった。生活を回すこともままならず、ひとりひっそり死のうと深夜に山に登ったら、そこには野生で勝手に育っている元気なリンゴの木があった(あとでこれはドングリだったことが判明する)。この姿にヒントを得て、まったく雑草も取らず、虫も飛び放題、ノーケアでリンゴを育ててみたら、野性味あふれるおいしいリンゴができた、というような本だった。この方、たしかUFOをみたとか、若干トンデモ系の発言をしていたみたいだけど、リンゴの育て方は『わたしたちの体は〜』の主張と通じるものがある。